遺骨がダイヤモンドになるって本当?遺骨に拘り過ぎな日本人
おはようございます。
『葬送人だより』ブログ管理人kandumeでございます。
先日、仕事中にお骨を骨壷に入れる作業をしていて、故人の遺族の方から質問が。
「亡くなった故人には金歯を入れていたんですけど」
「金歯は残っていませんか?」
と、言うご遺族様がいらっしゃいました。
そのとき、ご遺族の若い人が「金歯などしていませんでした」と横から助け舟を出してくれました。
その一言で、次の作業に進むことができ「ホッ」としました。
良くあるんです。金歯の問題は・・・。
でも、どうすることもできません、全て灰になってしまいますから。
流石に、ダイヤモンドの指輪を棺に入れてしまったという話は一度もございません(汗)。
ダイヤモンドと言えば、6~7年前から情報誌などで話題になりました。
「遺骨からダイヤモンドになる」という人工ダイヤモンドという驚きの話です。
遺骨の一部をダイヤモンド(人工ダイヤモンド)をつくる会社に送って、遺骨が入った人工のダイヤモンドを作ってくれる会社が出現。
遺骨が入った人工ダイアモンドは本当なのか調べてみました。
遺骨でダイヤモンド?
いきなりですが、遺骨からダイヤモンドができるなんて、みなさん信じてませんよね。
もし、このこのことが本当ならば、火葬場はもっときれいな建物に変わっていいですよね(汗)。
天然のダイヤモンドは、地上の有機物が地下深く埋まっていたものです。
マントル層まで埋まっていたものが出てきているものがダイヤモンド。
炭素系として私たちがよく目にするのが、人間が作った炭。
もうひとつが、炭素でできている石炭になります。
さらに、石炭よりももっと深い、マントルまで埋もれてしまい、再度、マントルが上昇するときに出てくるのが、ダイヤモンドです。
火葬場で遺骨となった骨には、炭素といったものは一切残りません。
黒くなって残って見える炭素らしき骨は、本とか毛布などで一部が黒く汚れただけです。
何度もいいますが、ダイヤモンドが作れるほどの炭素は残りません。
お気を悪くしないでほしいのですが、化学的にお答えします。
骨の主成分は、リン酸カルシウムですから、骨を高温高圧にしても、ダイヤモンドは出来ません。
ちなみに、地球上で最も硬い物質とされているダイヤモンドは7140~15300、金属で最も硬い超硬合金は1700~2050前後です。
それでは、遺骨でダイヤモンドを本当に作る業者とは?どうやっているのでしょうか。
遺骨からダイヤモンドを作る業者とは?
遺骨からダイヤモンドをつくる製造会社の一つは、スイスのアルゴダンザ社。
もうひとつは、アメリカのライフジェム社という会社です。
遺骨ダイヤモンドの製造現場を公開しています。
ウェブ上にも公開しています。
遺骨ダイヤモンドの作り方
遺骨をどのようにして、ダイヤモンドに入れるのかは記載されていませんでした。
- 遺骨を製造会社に送る
海外の会社ですけど、日本の提携会社へ遺骨を送ります。
詳しい遺骨の量などはわかりません。その後、遺骨に含まれている炭素量および成分の分析と検査
- 炭素を抽出
ダイヤモンドの元となる炭素を抽出します。
(炭素は遺骨には残っていません) - 黒鉛への変換
純度を上げるため、熱処理や物理処理を行い、不純物を取り除いて黒鉛にします。
(炭素の純度を上げるため熱処理??) - 高温高圧法で合成ダイヤモンドを生成
ダイヤモンドの生成には、高温かつ高圧な環境が必要となります。 - カット・研磨
来上がった人工ダイヤモンド原石をカット、研磨をしデザイン化して仕上げます。 - 保証書や鑑定書の発行
製作した業者が発行する遺骨ダイヤモンドの証明書となります。
出来上がった合成ダイヤモンドの硬度や輝きは、天然のダイヤモンドと殆ど同じになるといわれているから驚きです。
そして、この会社のキャッチコピーに書かれていたのが、「ご年配の方やご病気の方で遺骨がもろい状態であっても大丈夫」と書かれていて、骨の状態で決まるのではなく、炭素で左右されると謳っています。
もし、このことが事実なら、ダイヤモンドの発掘は恐竜などが埋もれた場所からダイヤモンドが出るということになりませんかね?・・・(汗)
遺骨ダイヤモンドの価格
- 原石製作のみの場合0.20カラット420,000円〜
- カットダイヤモンドの場合480,000円〜
- 1.0カラット原石の場合は1,980,000円〜、カットダイヤモンドの場合は2,480,000円〜となります。
高額な人工ダイヤモンドとなってますね(汗)。
故人の骨で作られたという証明はできるのでしょうか?
故人のものとDNAで証明できない
残念ながら、ライフジェム社の質問Q&Aでは、つぎのように記載されていました。
残念ながら高温で熱せられたご遺骨・ご遺灰は、細胞が破壊されDNAが残るということはありません。
その為、完成されたダイヤモンドそのものが、その方のご遺骨より取り出された炭素から精製されたと証明することは科学的には不可能です。
私どもはこの点を最も重要な要件であると認識し、ご遺族からお預かりしたその瞬間から、工程の途中、さらにお届けする最後の瞬間まで、片時も気を許すことなく、16ケタの管理番号を元に見守り続けております。
これがライフジェムの最大の使命だと強く認識しているからです。
引用:ライフジェム社HP
これなら、だれの遺骨のダイヤモンドかわかりません。
人間のやる仕事で間違いはないとは言えません。
最後の最後に大切な人のものであったという確信がなければ、遺骨ダイヤモンドとは言えません。
日本人のお骨に対する拘りは、外国に比べて比較にならないほど執着心が強いことがわかります。
では、どうしてここまで日本人は遺骨に拘るのでしょうか。
なぜ、遺骨ダイヤモンドをつくりの?
大切なご家族を無くされて、心が痛んでいるときに、このような魔の手が忍び寄ってくるのかもしれません。
日本での火葬が始まって、まだ100年ほどしか経過していません。
明治時代の後半から、日清戦争や日露戦争、第二次大戦といった人の死が多くなり、土葬の習慣から急に火葬という流れに変わりました。
「最後にオレがオマエの骨は拾ってあげる」からという、ちょっと笑えるジョークまで、骨に拘る日本人です。
何かにつけて、「骨」という言葉はたくさん使われています。
「骨身にしみて」
「骨折損の草臥れもうけ」
「肉を切って骨を砕く」
「骨っぽいひとだね」
「骨を惜しまない」
「骨の髄まで」
書きだしていけば、たくさんあり過ぎるほどあります。
火葬後の収骨場でも、お骨の簡単な説明でもしようものなら、みなさんのお耳はダンボに早変わりです。
遺骨を大切にする気持ちから、遺骨でダイヤモンドのペンダントという発想もわからないではありません。
いつまでも、故人を忘れない様にと肌身離さず大切にしたい気持ちもわかります。
それでも、火葬場で働くブログ管理人kandumeが祈ることは、「死を引きづらないこと」です。
湿度がこれだけ多い日本では、お骨には黒カビが発生します。
よくあることですが、お墓に納骨された骨壷には水が入っていたりします。
湿度が多い日本だからですね。
厳密に言えば、真空の状態にして骨壷に収めるのがいいのですが(本当ならば)・・・。
でも、現実はそうはいきません。
かといって、人工ダイヤモンドは、多少眉つば的なところが見え隠れしますけどね。
現実的な話で、火葬場で金歯を探そうとする人に説明しましょう。
金歯のおはなし
金の融解度
火葬炉の温度は、1000~1200℃で稼働しています。
温度計の配置場所で温度が変わります。
棺の足元の方は、1000℃程度と思われます。
遺体の頭部の部分は、高熱を与えますので1200℃にもなります。
その中で、金歯を残すことは不可能です。
金の融点(融ける温度)は1064℃と言われていますので、融けてなくなります。
ちなみに、鉄の融点は1535℃、銅は1084℃という値です。
金の硬度
金は、非常にやわらかく加工がしやすい特性を持つ金属として知られています。
圧迫することでのびる性質を「展性」、引っ張る力でのびる性質を「延性」と言いますが、金は「展性」「延性」どちらも兼ね備えています。
この特性を利用して作られているのが有名な金箔です。
1g程度の金があれば厚さ1/10000ミリほど、1m四方の大きさまでのばすことができます。
押し込み式硬さ試験方法のひとつ「ビッカース硬さ(単位:HV)」で表しますと、金の硬度は22と表示されています。
さらに、熱処理を施すと50まで高まると言われています。
つまり、金は柔らかい金属ということがわかります。
自然の歯と柔らかさがピッタリしていて、現在では、金歯はパラジウムと合金して使われているといいます。
気になる金の価格ですが、一応参考のために調べました。
純金で1g→5,000円前後、相場にもよります。
金歯で使用される金は合金となりますので、24kでないことは確かですね。
火葬場で金歯は探せませんので、棺に入れる前に金歯は取り外しておくといいですよ。
まとめ
遺骨で人工ダイヤモンドを作るのは、故人のものと証明ができるのであれば、多少金額が高くても心の拠り所としていいのかもしれません。
ところが、故人のものであるというDNA鑑定もできない状態といいます。
火葬場で働くブログ管理人kandumeが祈ることは、「死を引きづらないこと」です。
残された者が、精一杯生きることが、故人への最大の供養かと思います。
人工のダイヤモンドを遺骨でつくろうと考えるほど弱っているあなたに、『千の風になって 秋川雅史』をおくります。
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